①一等ライセンスの難易度は?
去年二等ライセンス※1を取得して、いよいよ一等ライセンス※1に挑戦しようかと思ってるんだけど、いろいろ調べてみるとなかなか難しいようだね・・・二等と比べてどのくらい難しいのかな?
※1一等及び二等無人航空機操縦者技能証明の意。今回は一等ライセンス及び二等ライセンスで表記
確かに一等は二等と比較すると難易度が数段上がりますね。さらに一等ライセンスは、登録講習機関(ドローンスクール)での受講料もかなり高額になりますので、挑戦するのであればしっかりと下調べをしておいた方が良いと思います。
そこで今回は、一等ライセンスの難易度をチェックしていきたいと思います。
〇一等ライセンスの取得要件
<実地試験の様子>
今回は、一等と二等の違いについては割愛しますので、詳しく知りたい方はこちらの過去の記事をご参照ください↓。
下の表は、一等ライセンスと二等ライセンスの講習を、それぞれ登録講習機関で受講した場合の比較表です。
回転翼航空機 | 一等ライセンス | 二等ライセンス | |||
経験者 | 初学者 | 経験者 | 初学者 | ||
学科講習時間 | 18時間以上 | 9時間以上 | 10時間以上 | 4時間以上 | |
実地講習時間 (登録講習機関) |
基本 | 50時間以上 | 10時間以上 | 10時間以上 | 2時間以上 |
限定変更 | 昼間1時間以上 目視7時間以上 |
昼間1時間 目視5時間 |
昼間1時間 目視2時間 |
昼間1時間 目視1時間 |
|
修了審査 合格点 |
90点以上 | 80点以上 | |||
学科試験 (海事協会) |
試験時間 | 75分 | 30分 | ||
出題数 | 70問 | 50点 | |||
合格点 | 90点以上 | 80点以上 |
なるほど。
こうしてみると、実地と学科の両方とも90点以上が合格ラインになるんだね。ということは課題の難易度も上がるのかな?
もちろん一等の試験は、実地、学科ともに課題の難易度は格段に上がります。それでは、実地試験の比較も見てみましょう。
・実地試験の比較
基本講習 |
一等ライセンス | 二等ライセンス | |
机上試験(共通) |
4問出題で1問につき5点減点 |
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口述試験(共通) |
飛行空域及びその他の確認(誤りがあった場合は10 点減点) |
||
作動前点検(誤りがあった場合は10 点減点) |
|||
作動点検(誤りがあった場合は10 点減点) |
|||
実技試験(基本) |
会場:屋外のみ 〇高度変化を伴うスクエア飛行(制限時間6分) |
会場:屋内又は屋外 〇スクエア飛行(制限時間8分) |
|
会場:屋外のみ |
会場:屋内又は屋外 〇8の字飛行(制限時間8分) |
||
会場:屋外のみ GNSS、ビジョンセンサー等 の水平方向の位置安定機能OFF の状態で試験 〇緊急事態を伴う8の字飛行(制限時間5分) |
会場:屋内又は屋外 GNSS、ビジョンセンサー等の水平方向の位置安定機能ONの状態で試験 〇異常事態における飛行(制限時間8分) |
||
口述試験(共通) |
飛行後点検(誤りがあった場合は5点減点) |
||
飛行後の記録(誤りがあった場合は10点減点) | |||
事故又は重大インシデントの説明(誤りがあった場合は5点減点) |
|||
事故等発生時処置の説明(誤りがあった場合は5点減点) |
二等の試験は、「緊急事態における飛行」以外はすべてGNSSやビジョンセンサーONで良いの対して、一等の方はすべての課題でOFFにしないといけないんだね・・・かなり難しそう。
そうですね。しかも、二等の試験が体育館などの屋内会場でもOKなのに対し、一等はすべて屋外での試験となるので、特に風の状況には相当影響されそうですよね。
・学科試験の比較
一等ライセンス学科試験科目 | 二等ライセンス学科試験科目 | |
1.無人航空機に関する規則 | 〇航空法全般 ・航空法に関する一般知識 ・航空法に関する各論 〇航空法以外の法令等 ・重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号) ・電波法(昭和25年法律第131号) ・その他の法令等 ・飛行自粛要請空域 |
〇航空法全般 ・航空法に関する一般知識 ・航空法に関する各論 〇航空法以外の法令等 ・重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号) ・電波法(昭和25年法律第131号) ・その他の法令等 ・飛行自粛要請空域 |
2.無人航空機のシステム | 〇無人航空機の機体の特徴(機体種類別) ・無人航空機の種類と特徴 ・飛行機 ・回転翼航空機(ヘリコプター) ・回転翼航空機(マルチローター) 〇無人航空機の機体の特徴(飛行方法別) ・夜間飛行 ・目視外飛行 〇飛行原理と飛行性能 ・無人航空機の飛行原理 ・揚力発生の特徴 ・無人航空機の飛行性能 ・無人航空機へのペイロード搭載 ・飛行性能の基本的な計算 〇機体の構成 ・フライトコントロールシステム ・無人航空機の主たる構成要素 ・送信機 ・機体の動力源 ・物件投下のために装備される機器 ・機体又はバッテリーの故障及び事故の分析 〇機体以外の要素技術 ・電波 ・磁気方位 ・GNSS(Global Navigation Satellite System) 〇機体の整備・点検・保管・交換・廃棄 ・電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄 ・エンジン機における整備・点検 。 |
〇無人航空機の機体の特徴(機体種類別) ・無人航空機の種類と特徴 ・飛行機 ・回転翼航空機(ヘリコプター) ・回転翼航空機(マルチローター) 〇無人航空機の機体の特徴(飛行方法別) ・夜間飛行 ・目視外飛行 〇飛行原理と飛行性能 ・無人航空機の飛行原理 ・揚力発生の特徴 ・無人航空機へのペイロード搭載 〇機体の構成 ・フライトコントロールシステム ・無人航空機の主たる構成要素 ・送信機 ・機体の動力源 ・物件投下のために装備される機器 ・機体又はバッテリーの故障及び事故の分析 〇機体以外の要素技術 ・電波 ・磁気方位 ・GNSS(Global Navigation Satellite System) 〇機体の整備・点検・保管・交換・廃棄 ・電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄 ・エンジン機における整備・点検 |
3.無人航空機の操縦者及び運航体制 | 〇操縦者の行動規範及び遵守事項 ・操縦者の義務 ・運航時の点検及び確認事項 ・飛行申請 ・保険及びセキュリティ 〇操縦者に求められる操縦知識 ・離着陸時の操作 ・手動操縦及び自動操縦 ・緊急時の対応 〇操縦者のパフォーマンス ・操縦者のパフォーマンスの低下 ・アルコール又は薬物に関する規定 〇安全な運航のための意思決定体制(CRM等の理解) ・CRM(Crew Resource Management) ・安全な運航のための補助者の必要性、役割及び配置 |
〇操縦者の行動規範及び遵守事項 ・操縦者の義務 運航時の点検及び確認事項 飛行申請 保険及びセキュリティ 〇操縦者に求められる操縦知識 ・離着陸時の操作 ・手動操縦及び自動操縦 ・緊急時の対応 〇操縦者のパフォーマンス ・操縦者のパフォーマンスの低下 ・アルコール又は薬物に関する規定 〇安全な運航のための意思決定体制(CRM等の理解) ・CRM(Crew Resource Management) ・安全な運航のための補助者の必要性、役割及び配置 |
4.運航上のリスク管理 | 〇運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎 ・安全に配慮した飛行 ・飛行計画 ・経路設定 ・無人航空機の運航におけるハザードとリスク無人航空機の運航リスクの評価 ・カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価 〇気象の基礎知識及び気象情報を基にしたリスク評価及び運航の計画の立案 ・気象の重要性及び情報源 ・気象の影響 ・安全のための気象状況の確認及び飛行の実施の判断 〇機体の種類に応じた運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案 ・飛行機 ・回転翼航空機(ヘリコプター) 。回転翼航空機(マルチローター) ・大型機(最大離陸重量25kg以上) 〇飛行の方法に応じた運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案 ・夜間飛行 ・目視外飛行 |
〇運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎 ・安全に配慮した飛行 ・飛行計画 ・経路設定 ・無人航空機の運航におけるハザードとリスク ・無人航空機の運航リスクの評価 〇気象の基礎知識及び気象情報を基にしたリスク評価及び運航の計画の立案 ・気象の重要性及び情報源 ・気象の影響 ・安全のための気象状況の確認及び飛行の実施の判断 〇機体の種類に応じた運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案 ・飛行機 ・回転翼航空機(ヘリコプター) ・回転翼航空機(マルチローター) ・大型機(最大離陸重量25kg以上) 〇飛行の方法に応じた運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案 ・夜間飛行 ・目視外飛行 |
以上のように、二等と比べて一等の方がいくつか科目が多いことが分かります。また、二等では計算問題が出題されませんが、一等では出題されますので、その分回答に時間がかかるのも特徴です。
・合格率
学科試験 | 受験者数 | 合格率 |
一等 | 約2600名 | 69% |
二等 | 約11300名 | 75% |
実地試験 | 受験者数 | 合格率 |
一等 | 400名 | 20% |
二等 | 900名 | 33% |
以上は昨年11月27日現在のデータですので少々古いですが、やはり学科も実地も合格率は低くなっておりますので、相当難易度が高いと考えてください。
・事前準備
そこで、できれば事前に屋外で練習できる場所を確保し、更にATTIモードに変更可能な機体を準備し、受講前に一等の課題を練習することをお勧めします。ただ、適切な練習環境を整えることが難しい場合は、受講を予定している登録講習機関などに相談してみると良いでしょう。
②DJI社が「レベル3/3.5」の飛行許可・承認申請に必要な情報の提供を開始
2024年5月9日に、DJI JAPAN株式会社が「レベル3(3.5)の飛行許可・承認に必要な情報の提供を行う」というリリースがありましたので、その内容をご紹介したいと思います。
なお、レベル3(3.5)の飛行というのは、「無人地帯での補助者無し目視外飛行」にあたりますが、こちらについては、過去の記事で詳しくご紹介しておりますので、こちら↓の記事をご参照ください。
一般向け(カメラドローン)
・DJI Mavic 3 Pro、DJI Mavic 3 Pro Cine
・DJI Mavic 3、DJI Mavic 3 Cine
・DJI Mavic 3 Classic
・DJI Air 3
・DJI Inspire 3
産業用
・Matrice 350 RTK
・Matrice 300 RTK
・Matrice 30、Matrice 30T、Matrice 30(Dock版)、Matrice 30T(Dock版)
・Matrice 3D、Matrice 3TD
・DJI Mavic 3E、DJI Mavic 3T、DJI Mavic 3M
DJI Delivery:
・DJI FlyCart 30
※農業用製品は対象外です。
以上の機体について、レベル3(3.5)の申請に必要な以下の1.2の情報を、申請者の要望により個別に提供するとのことです。
1.機体の初期故障期間
国土交通省航空局長通達「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」(令和5年12月26日、国空無機第214607号)の5-4(1)d)カ)に定める「想定される運用により、十分な飛行実績を有すること。なお、この実績は、機体の初期故障期間を超えたものであること。」の証明方法。
2.製造者等が保証した落下距離
国土交通省航空局長通達「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」(令和5年12月26日、国空無機第214607号)の5-4(3)c)オ)に定める「製造者等が保証した落下距離(飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるものをいう。)」について、弊社が保証する落下距離。
注意点は、あくまで情報の提供であって、飛行許可・承認が下りるかどうかは、結局航空局の審査次第ということです。したがって通常の空撮業務のようにレベル3または3.5の飛行でなくても目的が達成される場合、許可・承認は下りませんのでご注意ください。