『みらい』のブログBLOG

ドローンお役立ち情報Vol32『緊急用務空域ってなに?』・・・ほか

ドローン関連

①緊急用務空域とは?

能登半島が『緊急用務空域』に指定されていると聞いたけど、例えばこれが指定されると、自分でドローンを飛ばして自宅や周辺状況の確認なんかもできなくなっちゃうの?

まず、被害に遭われ今も困難に直面している方々へ心よりお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方々へ深く哀悼の意を表します。

『緊急用務空域』のについては、以前少しだけご説明しておりますが、今回の震災の様な自然災害はいつ何時起きてもおかしくないので、今回は詳しく説明しますね。

 

・『緊急用務空域』が制度化された経緯

まずは『緊急用務空域』の指定が制度化された経緯についてお話します。
直接的な切っ掛けは、2021年(令和3年)の2月に発生した栃木県足利市西宮町での山林火災です。当時の詳しい情報はこちらから↓


<TBS NEWSDIGチャンネルより>
この火災時に現場の近くをドローンが飛んでいたため、ヘリでの消火活動を一時的に中断するという事案が発生しました。ただ、このような問題はそれ以前に起きた災害でも散見されていたため、その都度、飛行自粛の要請等は出ていたわけですが、最終的にはこの件が切っ掛けとなり、2021年6月1日をもって航空法施行規則が改正され『緊急用務空域』の指定が可能となりました。

・『緊急用務空域』の概要

 
<国土交通省『無人航空機の飛行禁止空域』より>
『緊急用務空域』は(B)の空域です。

『緊急用務空域』の根拠となる法令は次の通りです。

航空法
(飛行の禁止空域)

第132条の85 第1項 第1号
無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域

航空法施行規則

(飛行の禁止空域)
第236条の71 法第132条の85第1項第1号の国土交通省令で定める空域は、次のとおりとする

第4項 国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関その他の関係機関の使用する航空機のうち捜索、救助その他の緊急用務を行う航空機の飛行の安全を確保する必要があるものとして国土交通大臣が指定する空域(以下「緊急用務空域」という。)

第5項 
第2号 国土交通大臣は、前項第4号の規定による指定をしたときは、インターネットの利用その他の適切な方法により、その旨及び当該指定に係る緊急用務空域を公示しなければならない。
第3号 前項の規定は、第一項第四号の規定による指定の変更又は解除について準用する。
第4号 無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない


<国土交通省『無人航空機の飛行禁止空域』より>

上の図にもありますが、『緊急用務空域』に関する関係法令の条文を簡単に解説します。
<条文解説>
・航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域での
ドローンの飛行は禁止
・飛行禁止となる空域は国土交通省令で決める(委任命令)
・国、自衛隊、警察、消防などが航空機を使用して、捜索、救助などの緊急用務を行う必要があると国土交通大臣が指定した空域
・『緊急用務空域』が指定された場合、その空域をインターネット上で公示する
・『緊急用務空域』に指定されているかどうかは、公示にて各自で確認をしなければならない

つまり災害などが起こった場合は、いきなりドローンを飛ばす前に、必ず国土交通省のHPで『緊急用務空域』の指定状況を確認する必要があるということです。

注意:この空域に指定された場合、操縦士ライセンスや特定飛行の許可承認があっても飛行させることはできません。また 100g 以上の無人航空機に限らず、すべての機体が対象です。

・令和6年能登半島地震における『緊急用務空域』指定の経緯

令和6年能登半島地震(以下、能登半島地震)が2024年1月1日に起きて、翌日の2日には『緊急用務空域(令和5年度緊急用務空域 公示第5号)』が指定されました。それから今日(1月29日)までに計3回指定が変更されており、現行は「令和5年度緊急用務空域 公示第9号」となっております。

<能登半島地震における『緊急用務空域』指定変更の経緯>
1月1日 16時10分 能登半島地震発生

1月2日 12時00分 令和5年度緊急用務空域公示第5号指定
※概要は下図の公示を参照

<令和5年度緊急用務空域公示第5号>
1月5日 19時 令和5年度緊急用務空域公示第6号
概要・・・1月6日7時より公示第5号から七尾市、志賀町及び中能登町の地上から30m未満の空域が除外

1月19日 21時 令和5年度緊急用務空域公示第8号※
概要・・・1月20日7時より一部区域を除き、北緯37度線以北の能登半島全区域において、地上から30m未満の空域が除外

1月26日 19時 令和5年度緊急用務空域公示第9号
概要・・・1月26日19時より一部区域を除き、北緯37度線以北の能登半島全区域において、既に除外されている地上から30m未満の空域に加えて、地上からの高度30m以上150m未満の空域も除外(下図を参照)

<令和5年度緊急用務空域公示第9号別紙>

公示は国土交通省のHPまたはXアカウントをご確認ください↓
『緊急用務空域』の工事
X(旧Twitter)アカウントはこちら↓

https://twitter.com/mlit_mujinki
※公示第7号は広島県江田島市の火災で指定されてました(1月17日13時で解除)。

 

1月29日時点の『緊急用務空域』は令和5年度緊急用務空域公示第9号です。
緊急用務空域は、北緯37度以北の能登半島全域の陸地(石川県輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町、中能登町)の地上150mから600mまでの空域及び「輪島消防署」と「野之江総合公園」の周辺、半径240mの地上から600mの空域(上図の通り)に緩和化されております。

『緊急用務空域内』での飛行は可能か?

なるほどー『緊急用務空域』に指定されても、高度制限がある場合もあるのね。ほかに緊急用務空域で飛ばせる方法はないの?

上で説明したように、救助、消化や緊急物資の輸送など、緊急を要する航空機が頻繁に往来するためにこの空域が指定されているわけですから、基本的にドローンを飛行させることはできません。ただし例外的に以下のケースについては飛行が認められることもあります。

<緊急用務空域内で飛行が認められるケース>
①飛行の目的が「災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、『緊急用務空域』の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行であり、新たに国土交通大臣の飛行許可を取得した場合。
②航空法第 132 条の 92(捜索、救助等のための特例)に当たる場合。
第132条の92 第132条の85、第132条の86(第1項※を除く。)及び第132条の87から第132条の89までの規定は、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しない。

本当に必要な飛行であれば飛ばせる場合もあるわけね。
ただ、公示の区域に「陸地」と書いてあるけど、海から陸側を撮影する場合は制限がないんでしょ?

 

確かに「陸地」とあるので、海上でドローンを飛ばす場合は、他の法令で規制がかかっていない限りは飛ばすことができるという事になります。ただ、陸上から離陸することはできませんので、区域外の陸地や船上から離陸することになります。その場合でも緊急用務空域が出ている状況を鑑みると、自身がドローンを飛ばすことで緊急用務に支障が出るか否かは考える必要がありますよね。また、一般の方は「ドローンを飛ばしてはいけない」とだけしか認識していない可能性もありますので、警察へ通報されないように対策をしないといけませんね。 

②無登録ドローンの事故で書類送検 相模原市(1/15)


<Livedoor News カナロコby 神奈川新聞)2023/1/15 記事より>

<以下、記事を一部抜粋>

無登録のドローンを住宅に落下させる事故を起こしたとして、神奈川県警座間署は15日、相模原市中央区の自営業男性(58)を航空法違反(無人機無登録など)の疑いで書類送検した。ドローンの墜落事故の立件は県内では珍しいという・・・以下、記事をご参照ください↓
相模川で無登録のドローン飛行、3.8キロ離れた座間の民家に墜落させる 容疑で相模原の男性を書類送検

久しぶりの事件記事です。
今回は、未登録でドローンを無許可承認で飛行した上で物件を損壊したという事件です。
未登録の機体を運航した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。仮に登録している機体でも、無許可承認で特定飛行を行った場合は50万円以下の罰金となります。また、物件を損壊した場合は、当然賠償請求をされると思いますが、無登録機は基本的に保険に加入できないと思いますので、くれぐれも機体の登録や包括許可承認は怠らないようにお願いします。

③事故報告でみる事故が多い機体と飛行方法

<無人航空機に係る事故等報告一覧>

ドローンの事故報告が義務化されてから1年が経ちましたが、先日、国土交通省のHPに、今まであった事故報告の統計がアップされておりますので、ご説明したうえで感想もお伝えしたいと思います。⇒事故報告一覧はこちら

・2022年12月5日から2023年11月30日までの間に報告があった事故件数は93件
・重大事故にあたったケースの内訳は以下の通り
①物件の損壊・・・2%

②人の死傷(重症以上)・・・98%
③航空機との衝突又は接触・・・0%

・重大インシデント
①制御が不能となった・・・53%
②人の負傷・(軽傷)・・・47%

※重大事故及び重大インシデントについては以下を参照

また、その中でも特に多いのが農薬散布ドローン(ヘリを含む)での事故で、その件数は49件と事故報告件数の約半数にも上ります。
さらにその事案の要因を確認してみると、汎用ドローンの事故原因が、モーターの停止や通信の切断など、人の操作に起因しないもの(飛行前未点検等は除く)が多いのに対し、農薬散布ドローンの場合は、明らかに操作ミスや自動航行の設定ミスによる原因が多いことが伺えます。以下に
その事案の一例を抜粋しましたのでご確認ください。

 

<重大インシデント事案> 
No46 発生場所:令和5年7月19日 機体:XAG JAPAN
事案の概要:農薬散布のため無人航空機を飛行させていたところ、自動飛行に伴う飛行ルートの設定に誤りがあったことにより、機体が操縦者の近傍に設置されていた電柱の支線に衝突し、その反動で操縦者の顔に接触し負傷した。
人の死傷等:操縦者軽傷(左耳介後面6針、下顎下部4針、下顎部7針)

<事故事案>
No48 発生場所:令和5年7月29日 機体:マゼックス飛助DX
事案の概要:農薬散布のため無人航空機を飛行させていたところ、操作を誤り意図せず自動帰還モードに入り、帰還中に電話線に接触し切断させるとともに、機体が着陸態勢に入った際に補助者が機体に接近したことでプロペラが左腕に接触して負傷した。
人の死傷等:左右前腕挫創左大腿挫創左前腕筋断裂

農薬散布ドローンの事案が多い原因は多々あると思いますが、「日頃の操縦技術の向上」「補助者との連携方法の確認」「フェールセーフの設定確認」や「危機回避のための練習」などが疎かになっていることも要因ではないかと考えます。農薬散布ドローンは、空撮ドローンよりも概ね容積や重量が大きくなりますので、ひとたび操作をあやまれば事故に繋がる可能性があります。くれぐれも運用の際はご注意ください。

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