
農薬散布ドローンに関する航空法施行規則の改正ポイント

農薬散布ドローンの承認要件が緩和化され、承認を受けなくても散布が出来るようになると聞いたけど、僕のドローンも、次回から承認が不要になるの?

ご質問のとおり、令和8年3月23日(国空無機第 338898 号)航空局通達では、一定の要件を満たす場合、農薬等の空中散布などに関する飛行の方法について、承認が不要になる取扱いが示されました。もっとも、これは一律に自由に飛ばせるようになるという意味ではなく、機体・操縦者・飛行場所・高度・安全管理体制などについて、細かな条件を満たすことが前提です。この記事では、今回の通達について、特に重要な「承認不要になるための要件」と、「要件を満たすと何ができるようになるのか」を中心に、わかりやすく整理していきます。
①今回の通達で何が変わるのか

現在も基本的には、機体・操縦者・飛行場所・飛行方法に変更がなければ、年1回の申請により1年間の散布が可能です。しかし、今回の通達により、一定の要件を満たす場合に限り、飛行方法に係る承認が不要となりました。 ただし、農薬散布であれば自動的に申請が不要になるわけではなく、あくまで要件を完全に満たしていることが大前提となります。
今回の通達のポイント

今回の通達は、航空法施行規則第236条の82第1項第2号に基づき、農薬等の空中散布などを行う場合において、どのような条件を満たせば飛行の方法に係る承認が不要となるのか、その詳細を明らかにしたものです。あわせて、安全確保の方法や運航上の注意点についても具体的に示されており、単なる制度説明ではなく、現場運用の基準として読むべき内容になっています。
対象になるのはどんな飛行か

想定されているのは、主に農地又は森林の区域内で行う農薬散布等の業務飛行です。飛行高度も自由ではなく、地表・水面又は農作物の上端から4m以下の空域で飛行させることが前提とされています。つまり、趣味飛行や一般的な空撮ではなく、農業・林業の現場作業としてのドローン運用を対象にした制度である点が重要です。
②承認不要になるための要件とは?

結局、何を満たせば承認不要になるのかが一番気になります。

おっしゃる通りです。本制度は単に「申請を不要にするもの」ではなく、安全体制が確立された運用に対して「手続きを簡素化・合理化するもの」と捉えるのが適切です。ですから、現行の承認に基づき既存の機体を運用される場合、構成の変更やライセンスの新規取得が必須となるわけではありません。ドローンスクール等による、不安を煽るような勧誘や誤解を招く案内には十分ご注意ください。
飛行場所・飛行高度の要件
- 多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外で飛行させること
- 農地又は森林の区域内で飛行させること
- 飛行高度は、地表・水面又は農作物の上端から4m以下であること
- 第三者の上空で飛行させないこと
- 第三者が飛行範囲に立ち入った場合には、速やかに飛行を中止すること

この「4m以下」という条件は特に重要で、少しでも外れると、この特例の対象にならない可能性があります。果樹園や傾斜地などでは、思った以上に高度管理が難しいため、実務では事前確認が欠かせません。
さらに、第三者の上空で飛行させないことも重要な要件です。万が一、飛行範囲に第三者が立ち入った場合には、速やかに飛行を中止することが求められます。
機体に求められる要件
- 第一種機体認証又は第二種機体認証を受けた無人航空機であること
- 夜間飛行、目視外飛行、30m未満飛行、危険物輸送、物件投下など、実際の飛行内容に応じた必要な機能・性能が認証審査で確認されていること
①危険物輸送を行う場合:
危険物の輸送に適した装備が備えられていること。
②物件投下を行う場合:不用意に物件を投下する機構でないこと。
③人又は物件から30m以上の離隔距離を確保できない飛行を行う場合:
第三者又は物件に接触した際の危害を軽減する以下に例示するシステムによる機能を有していること。
a)プロペラガード
b)衝突した際の衝撃を緩和する素材
c)衝突した際の衝撃を緩和するカバー
d)衝突した際の衝撃を緩和するパラシュート
④夜間飛行を行う場合:
機体の向きを視認できる灯火が装備された機体であること。
- 夜間飛行、目視外飛行、人又は物件から30m以上の離隔を確保できない飛行を行う場合は、総重量25kg未満であること
- ジオフェンス機能など、飛行範囲を制限する機能を備えていること
- リターントゥホーム、自動着陸などのフェールセーフ機能を備えていること

夜間飛行、目視外飛行、人又は物件から30m以上の離隔を確保できない飛行を行う場合には、総重量25kg未満であることも要件です。散布装置や積載物を含めた総重量で確認する必要があるため、ここは実務上、特に注意したいところです。加えて、飛行範囲を制限するジオフェンス機能や、リターントゥホーム・ホバリング・自動着陸などのフェールセーフ機能も重要になります。承認不要になる代わりに、機体側で安全性を確保することが求められます。
操縦者に求められる要件
- 一等無人航空機操縦士又は二等無人航空機操縦士の技能証明を有していること
- 対面飛行や8の字飛行等の操縦技量を維持していること
- 農薬散布等の実運用に必要な訓練を継続していること
※25㎏以上の機体を飛行されせる場合は、「25㎏以上」の限定変更(解除)が行われていること。

操縦技能証明の取得に加え、対面飛行や8の字飛行などの操縦技量を維持し、農薬散布等に必要な訓練を継続していることも重視されています。要するに、資格保有+実運用に耐えうる技能維持が求められます。
運航・安全管理の要件
- 夜間飛行又は目視外飛行を行う場合は、自動操縦により飛行させること
- 夜間飛行、危険物輸送、物件投下を行う場合には、原則として必要人数の補助者を配置すること
- 看板やコーン等による立入管理措置を講じること
- 飛行前に気象、機体、飛行経路等を確認すること
- 5m/s以上の突風が発生するなど、安全に飛行できない状況では即時に飛行を中止すること
- 飛行マニュアルを作成し、これを遵守すること

夜間飛行又は目視外飛行を行う場合には、自動操縦により飛行させることが必要です。現場判断だけに依存するのではなく、運航の仕組みそのものとして安全を確保する考え方が採られています。また、夜間飛行、危険物輸送、物件投下を行う場合には、原則として必要人数の補助者を配置することが求められます。さらに、看板やコーン等による立入管理措置も必要です。加えて、5m/s以上の突風が発生するなど、安全に飛行できない状況になった場合には即時に飛行を中止することとされています。承認不要だからこそ、現場での中止判断はより重要になります。
③要件を満たすと何ができるようになるのか
不要になる承認・許可

要件を満たしたら、具体的に何がラクになるんでしょうか?

最も大きな変更点は、飛行の方法に係る承認が不要になることです。一定の要件を満たした場合、航空法第132条の86第3項および第5項第2号の規定による飛行承認が不要となります。
ただし、例えば以下のような内容で既に許可・承認を取得している場合を考えてみましょう。
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場所: 日本全国
-
期間: 許可承認日から1年間
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許可内容: DID(人口集中地区)
-
承認内容: 30m距離確保、目視外飛行、物件投下、危険物輸送
現行のDIPS(ドローン情報基盤システム)における更新手続きの簡便さを踏まえると、正直なところ、新制度によるメリットはそれほど大きく感じられないかもしれません。
④「承認不要」でも免除されないもの

承認が不要なら、飛行計画の通報や飛行日誌も不要になるんですか?

いいえ、そこは別です。ここを誤解してしまうと危険です。承認不要でも、必要な義務は残ります。
- 飛行計画の通報
今回の制度の対象となる飛行であっても、特定飛行に該当するため、飛行計画の通報は必要です。承認不要になったからといって、事前の情報共有まで不要になるわけではありません。 - 飛行日誌の備付け・記載
飛行記録、点検記録、整備記録などを適切に管理する必要があります。業務運用として継続的に飛行させる以上、日々の記録管理は欠かせません。 - 事故・重大インシデント発生時の報告義務がある
万一の事故や重大インシデント発生時には、所定の報告対応が必要です。承認不要であっても、事故対応義務が軽くなるわけではありません。 - 一定の場合は保険加入も必要
総重量25kg以上の機体を飛行させる場合には、第三者賠償責任保険への加入が必要とされています。機体重量によって必要な管理が変わる点にも注意が必要です。

「承認不要」=「何もしなくてよい」ではありません。不要になるのはあくまで一部の承認手続であり、飛行計画通報・記録管理・事故報告・保険対応などの実務は引き続き重要です。
⑤実務で特に気をつけたいポイント

実務では、どこを特に注意して見ておけばいいですか?

制度の条文だけ読むと見落としやすい点があります。実務では、次のポイントを特に意識しておくと判断ミスを防ぎやすくなります。
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- 「4m以下」の高度条件を厳密に管理する
高度基準は、地表・水面だけでなく、農作物の上端も基準になります。果樹園や傾斜地では、思っている以上に条件を外れやすいため、現地確認と飛行設計が重要です。 - 「第三者」と「関係者」を整理しておく
通達上、「関係者」には操縦者・補助者だけでなく、作業の発注者も含まれます。誰が関係者で、誰が第三者に当たるのかを現場で曖昧にすると、立入管理や安全判断に支障が出ます。 - 総重量25kg未満の条件を見落とさない
夜間飛行、目視外飛行、人又は物件から30m以上の離隔を確保できない飛行では、総重量25kg未満であることが要件になります。散布装置や積載物を含めた重量確認が必要です。 - 風速や天候の判断を甘くしない
5m/s以上の突風が発生するなど、安全に飛行できない状況では即時中止が求められます。スケジュール優先ではなく、安全優先の運航判断が必要です。 - 承認不要の対象かどうかを飛行ごとに確認する
「農薬散布だから常に承認不要」と考えるのは危険です。飛行場所、高度、機体、資格、運航方法などを個別に見て、対象になるか判断する必要があります。
- 「4m以下」の高度条件を厳密に管理する

実務上の注意
制度を使えるかどうかは、単に「農薬散布かどうか」では決まりません。飛行条件・機体・操縦者資格・安全体制を総合的に確認することが重要です。
⑥まとめ
- 一定の要件を満たせば、飛行の方法に係る承認が不要になる
農薬等の空中散布などを行う飛行について、機体・操縦者・飛行場所・高度・安全体制等の条件を満たす場合には、承認不要の特例を利用できます。 - 一方で、誰でも自由に飛ばせる制度ではない
認証機体、有資格者、自動操縦、補助者配置、立入管理措置など、安全面の条件を満たすことが前提です。 - 承認不要でも、飛行計画通報や飛行日誌などの義務は残る
実務上は、申請の有無だけでなく、その後の管理体制まで含めて整備しておく必要があります。 - 重要なのは「自社の運用が本当に要件を満たしているか」の確認
制度を正しく使うには、個別の飛行が承認不要の対象となるかを事前に検討し、必要なら別途申請に切り替える判断も必要です。 - 現状は特に何も変わらない
現時点では当該要件に適合するマルチコプターは市販されていません。したがって、現場の運用レベルにおいては、**当面の間「従来通りの手続きが必要」**であると捉えておくのが現実的です。
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要するに、今回の制度改正はどう理解すればいいですか?

ポイントはシンプルです。農薬散布だからといって一律に申請が不要になるわけではなく、「特定の要件を満たした運用」に限って承認不要の特例が適用される、という理解が重要です。ただし、現時点ではこの要件に対応するマルチコプター(ドローン)が存在しないため、実質的には**「今はまだ何も変わらない」**と思っていただいて差し支えありません
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農薬散布ドローンの運用について、こんなお悩みはありませんか?
- この飛行は承認不要制度の対象になるのか確認したい
- DID、夜間、目視外飛行が絡むが、別途申請が必要か判断したい
- 機体認証、操縦者資格、飛行マニュアル、補助者配置の整理をしたい
- 自社の運用体制で法的に不足している点がないか確認したい
当事務所では、ドローン飛行に関する法令確認、許可・承認申請の要否判断、飛行マニュアル整備、運航体制のチェックなど、実務に即したご相談に対応しております。
「この飛行、申請が必要か迷う」
「農薬散布の業務運用を法的に整理しておきたい」
「承認不要で回せる体制を整えたい」
このような場合は、早めに確認しておくことで、後からの手戻りや飛行停止リスクを減らすことができます。
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