①第三者上空の「第三者」とは?

よく、「ドローンは第三者の上空を飛ばせない」と聞きますが、そもそもこの「第三者」とは誰を指すのでしょうか。

おっしゃるとおり、航空法等では原則として「第三者」の上空は飛行できないことになっていますが、この「第三者」が誰にあたるのかは非常に分かりづらいです。また、「第三者上空」が具体的にどの範囲を指すのかも分かりにくい点です。
そこで、今回はこの「第三者」について詳しくご説明します。
(1)「第三者」とは誰か?

この「第三者」については、令和7年11月17日制定の「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」において、以下のように記載されています。
(1)「第三者」について
航空法 132 条の 87 などで規定する「第三者」の定義については、以下のとおり。「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者をいう。次に掲げる者は無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与しており、「第三者」には該当しない。
①無人航空機の飛行に直接的に関与している者
直接的に関与している者(以下「直接関与者」という。)とは、操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員とする。
②無人航空機の飛行に間接的に関与している者
間接的に関与している者(以下「間接関与者」という。)とは、飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。
a)操縦者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。
b)間接関与者が、操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、操縦者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。
c)間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。
例:映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒 等

要約は以下とおり。

🚁「第三者」の定義(要約)
「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接的・間接的に関与していない人のこと。
✅「第三者」に該当しない人(=関与している人)
① 直接関与者
- 操縦者
- 操縦の可能性がある人
- 補助者など、安全確保に必要な要員
② 間接関与者(以下のすべてに該当する人)
- 飛行の目的について操縦者と共通認識を持っている
- 操縦者から、安全上の注意と明確な指示を受け、それに従う意思と理解がある
- 飛行への関与を自らの意思で決定できる
例:映画の空撮に協力する俳優やスタッフ、学校のイベントで人文字を作る生徒など
つまり、第三者とは、ドローンの飛行に直接的または間接的に関与していない人のことです。従って、ドローンの操作や安全管理に関わっていない人は、すべて「第三者」として扱われます。
(2)「第三者」上空とは?

ということは、第三者が真下にいる場合は飛行できないという解釈になるのでしょうか?

「第三者上空」というのは、ドローンの真下だけを指すのではありません。「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」にも記載があるので、そちらを確認してみましょう。
「第三者上空」とは、(1)の「第三者」の上空をいい、当該第三者が乗り込んでいる移動中の車両等(3.(7)に例示する車両等をいう。以下同じ。)の上空を含むものとする。この場合の「上空」とは、「第三者」の直上だけでなく、飛行させる無人航空機の落下距離(飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離)を踏まえ、当該無人航空機が落下する可能性のある領域に第三者が存在する場合は、当該無
人航空機は当該第三者の上空にあるものとみなす。
また、無人航空機の飛行が終了するまでの間、無人航空機の飛行に関与しない者((1)の「第三者」)の態様及び飛行の形態が以下のいずれかに該当する場合は、無人航空機が第三者上空にあるとはみなさないこととする。
①「第三者」が遮蔽物に覆われており、当該遮蔽物に無人航空機が衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合(当該第三者が屋内又は車両等(移動中のものを除く。)の内部にある場合等。)
②「第三者」が、移動中の車両等(無人航空機が当該車両等に衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合に限る。)の中にある場合であって、無人航空機が必要な要件を満たした上で審査要領5-4(3)c)カ)(iii)に規定されるレベル 3.5 飛行として一時的に当該移動中の車両等の上空を飛行するとき。ただし、「第三者」が遮蔽物に覆われず、無人航空機の衝突から保護されていない状況になった場合には、無人航空機が「第三者上空」にあるとみなされる点に留意すること。

要約は以下とおり。

🚁「第三者上空」とは?
ドローンが、飛行に関与していない人(=第三者)の頭上やその周辺を飛ぶことを指します。
- 「第三者の真上」だけでなく、ドローンが落下する可能性のある範囲に第三者がいる場合も「第三者上空」とみなされます。
- 移動中の車やバイクなどに第三者が乗っている場合、その車両の上空も含まれます。
✅「第三者上空」とみなされないケース
以下のような状況では、ドローンが飛んでいても「第三者上空」とはみなされません:
1.遮蔽物(屋根や壁など)で第三者が守られている場合
- 例:屋内にいる人、停車中の車の中にいる人など
- 移動中の車両の中に第三者がいて、ドローンが特定の条件を満たした飛行(レベル3.5)をしている場合
2.このとき、車両がドローンの衝突から第三者を守れる構造であることが必要です
⚠️注意点
- 遮蔽物がない場所で第三者がいる場合は、ドローンがその人の真上でなくても「第三者上空」とみなされます。
- 飛行計画では、落下の可能性がある範囲に第三者がいないかをしっかり確認することが重要です。
(3)第三者の立入を制限するには?

ドローンは「第三者上空」を飛行させることができないため、飛行範囲内に「第三者」の立入を制限する方法を講じる必要があります。主な方法は以下の通りです。
🚧 第三者の立入を制限する主な方法(立入管理措置)
① 補助者の配置
- 飛行経路下を監視し、第三者が近づいた場合に口頭で警告・誘導する人を配置する
- 不測の事態に備えて、即時に飛行を中止できる体制を整える
② 区画の明示(物理的・視覚的な制限)
- フェンス、塀、ロープなどで飛行範囲を囲う
- 看板やコーンを設置し、「関係者以外立入禁止」などの表示をする
- 第三者が物理的に立ち入れない構造であることが重要
③ その他の適切な措置(レベル3・3.5飛行など)
- 機体カメラで飛行経路下を確認し、第三者がいないことをリアルタイムで把握
- インターネットやポスターで周知し、事前に第三者の立入を防ぐ
- 移動車両上空を一時的に横断する場合は、特定の条件(技能証明・保険加入など)を満たす必要あり
📌 注意点
- 「第三者の立入を確実に制限できる」場合は、補助者の配置が不要になることもあります
- 逆に、立入の可能性が少しでもある場合は、補助者の配置が必要です
- 飛行マニュアルや申請内容によって、どの方法が適切かが変わるため、事前の確認が重要です
(4)第三者上空でドローンを飛行させるには?

どうしても第三者上空を飛行させなければならない場合は、以下の要件を満たす必要があります。
🚫 原則:第三者上空の飛行は禁止
- 航空法や審査要領では、第三者の上空を飛行させてはいけないと明記されています。
- 第三者とは、操縦者や補助者などの関係者以外の人を指します。
✅ 例外的に飛行できる方法(カテゴリーⅢ飛行)
第三者上空を飛行させるには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります:
|
条件 |
内容 |
|---|---|
|
🧑✈️ 一等技能証明 |
国が認定する高度な操縦資格が必要 |
|
🛩 第一種機体認証 |
安全性が保証された機体であること |
|
📄 飛行許可・承認申請 |
国土交通大臣の飛行許可・承認が必要 |
このような飛行は「カテゴリーⅢ」と呼ばれ、立入管理措置なしで第三者上空を飛行できる唯一の方法です。

ただし、現実的にカテゴリーⅢの飛行を行うのはまだ難しいため、実質的には第三者上空の飛行はできないと考えておきましょう。
②「領空侵犯の無人機の撃墜が可能に」閣議決定

政府は6月27日の閣議で、無人機が領空侵犯した場合、自衛隊は正当防衛や緊急避難に当たらなくても撃墜できるとの見解を閣議決定した。無所属の松原仁元拉致問題担当相の質問主意書に答えた。 【地図で解説】日本は太平洋側からも中国の脅威を受けている 自衛隊法は、外国の航空機が無許可で領空に侵入した場合、侵犯機を着陸させたり領空から退去させるため「必要な措置」を講じることができると定めている。しかし、撃墜を含む武器の使用は、相手のパイロットの人命に関わるという理由で、正当防衛や緊急避難に該当する場合にのみ許されると解釈されている・・・・続きはこちら
記事の要約
🛡️ 新方針の概要(2025年7月閣議決定)
- 自衛隊による撃墜が可能に
領空侵犯した無人機に対して、これまで必要とされていた「正当防衛」や「緊急避難」の要件なしで撃墜できると政府が明言。 - 背景には中国軍の活動増加
今年に入り、中国の大型偵察・攻撃型ドローンの太平洋飛行が急増。自爆型ドローンの開発も進んでおり、政府は対応強化を迫られていた。
⚖️ 法的インパクトと論点
1. 「脅威」の定義が曖昧に
- 従来は「人命への危険」が明確な場合に限り武器使用が認められていた。
- 今回の方針では、無人機には人が乗っていないため、撃墜しても人命に関わらないという論理で武器使用が可能に。
- しかし「未確認=脅威」とする判断基準が明文化されておらず、恣意的な運用の懸念が残る。
2. 民間ドローンとの境界線
- 小型無人機等飛行禁止法では、皇居・官邸・基地などの上空での飛行を禁止し、必要な措置(撃墜含む)を認めている。
- 今回の方針は軍事目的の無人機を対象としているが、民間機との識別が困難なケースもあり得る。
- 誤認による撃墜が発生した場合、損害賠償や刑事責任の所在が不明確。
3. 法務担当者の検討課題
- 「脅威」と判断する基準をどう構築するか(飛行経路、通信状況、機体登録の有無など)。
- 撃墜判断のプロセスに法的レビューや第三者監視を導入すべきか。
- 民間事業者が誤って撃墜対象とされた場合の救済措置や通報制度の整備。
🧭 今後の展望
- 警察による迎撃装備の整備(ジャミングガンや迎撃ドローン)も進行中。
- ドローンの登録制度や飛行許可制度との連携が不可欠。
- 法務担当者は、安全保障と民間利用のバランスを取るルール設計が求められる局面です。

この方針は国家防衛を迅速に対応する体制強化として評価できる一方で、民間運用との線引きや法的整備が今後の重要課題となります。





