『みらい』のブログBLOG

旅館業・住宅宿泊事業(民泊)・・・どっちが正解?

民泊関連

来月から、両親が都心部に引っ越すことになって、実家を貸し出したいんだけど、なかなか借り手がいないのよね・・・そうしたら知人から、「空き家を民泊にしたら、結構な収益になる」って聞いたんだけど、本当のところはどうなの?

「実家の空き家」の活用について悩む人は多いですね。民泊にするメリットには、収益が得られやすく、初期投資を抑えられる点があります。ただし、デメリットとして景気や観光需要に影響されやすく、宿泊業特有のトラブルも考えられます。感染症の流行や国際情勢で観光需要が減少する可能性もあるので、こうした要素を踏まえて検討しましょう

宿泊施設にするなら旅館業の許可を取った方が良いって聞きました。旅館といえば、旅館というと観光地の温泉旅館やホテルを思い浮かべますが、実家は木造平屋の戸建てなんです。これでも旅館業はできますか?

 

もちろん、戸建て住宅でも旅館業法や関係法令を満たせば営業許可を取得できますが、「住宅宿泊事業」しかできない場合もありますので、その違いとそれぞれの要件を比べてみましょう。

〇旅館業(簡易宿所)と住宅宿泊事業(民泊)の違い

今回のご相談内容の物件は、「戸建て・家主不在・フロント設置なし」ということになりますので、旅館業は「簡易宿所※1」、住宅宿泊事業は「家主不在型」で比較することになります。
※1:自治体によっては、簡易宿所ではなく、ホテル・旅館でしか許可が下りないところもあります

旅館業(簡易宿所)と住宅宿泊事業(家主不在型)の主な比較

  旅館業(簡易宿所) 住宅宿泊事業(家主不在型)
根拠法令 旅館業法 住宅宿泊事業法
所管省庁 厚生労働省 国土交通省
厚生労働省
観光庁
営業可能日数 制限なし 180日(賃貸契約は除く)
フロント設置義務 なし なし
建築基準法 ホテル・旅館 戸建て住宅
都市計画法 ホテル・旅館の営業が可能な地域 全地域(制限がある市町村もある)
客室面積 33㎡以上【内法寸法】(ただし、定員が10名未満の場合は、3.3㎡/人) 3.3㎡×人数【内法寸法】
入浴施設 必要(シャワー室のみ可) 必要(シャワー室のみ可)
トイレ 必要 必要
厨房 不要 必要
消防法 ホテル・旅館の基準 ホテル・旅館の基準
許認可等 許可 届出
近隣住民との
トラブル防止措置
不要 必要
不在時の業務委託 規定なし 規定あり
水質汚濁防止法 浄化槽の人槽基準あり 対象外
土砂災害等 レッドゾーンは対策が必要 規定なし

上の表は、住宅宿泊事業(家主不在型)と旅館業(簡易宿所)の比較をまとめたものですが、特に重要な箇所を赤でマークしてみました。
なんといっても一番の違いは、旅館業が一年を通して営業ができるのに対し、住宅宿泊事業は、年間180日までしか営業ができないことです。これは、単純に収益面だけで考えると、旅館業の要件がクリアできるのであれば、特別の事情が無い限り、旅館業の許可を取得した方が良いということになりますね。

〇住宅宿泊事業における営業日数の注意点

旅館業と住宅宿泊事業の営業日数の違いは分かったけど、住宅宿泊事業しかできない場合もあるんでしょう?もし180日を超えて営業したらどうなるの?

もちろん、住宅宿泊事業で180日を超える営業を行った場合は、厳しい罰則があります。ただし、180日を超えても問題が無いケースもありますので、詳しく見ていきましょう。

住宅宿泊事業(民泊)の『営業可能日数』の注意点

180日を超えて住宅宿泊事業を行った場合
住宅宿泊事業法に基づいて民泊を運営する場合、年間の営業日数は180日以内に制限されています。もし180日を超えて営業を行った場合、「旅館業法」の無許可営業として、6ヶ月以上の懲役若しくは100万円以下の罰則又はこれを併科される可能性があります。

また、住宅宿泊事業者は、宿泊日数などを毎偶数月に都道府県へ報告しなければなりませんが、虚偽の報告を行った場合は、30万円以下の罰金が科せられます。

仮に、虚偽の報告をしても、住宅宿泊仲介業者※2は、予約の情報などを、国土交通省へ報告する義務がありますので、必ずバレます。

※2.住宅宿泊仲介業とは、旅行業者以外の者が報酬を得て、宿泊者と住宅宿泊事業者の間で宿泊サービスの提供に関する契約を代理で締結し、媒介や取次ぎを行う事業です。「Airbnb」「Booking.com」もこれにあたります。

<民泊事業の体系>

※国土交通省資料より

住宅宿泊事業の対象物件を賃貸した場合

民泊物件をマンスリーマンションとして貸し出した場合、180日を超えても問題無いと聞いたけど、大丈夫なの?

若干意味合いが違いますので、正しくお伝えします。
まず、前提として住宅宿泊事業を実施するには、設備要件と居住要件を満たす必要があります。このうち居住要件とは以下の3つです。

【住宅宿泊事業を実施するための居住要件】

(1)現に人の生活の本拠として使用されている家屋
現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋

(2)入居者の募集が行われている家屋
住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋

(3)随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
生活の本拠としては使用されていないものの、その所有者等により随時居住利用されている家屋

民泊とマンスリーマンションを併用する場合は、以下の点に注意する必要があります。

1.届出の種類:
(2)入居者の募集が行われている家屋として届け出ることが重要です。この場合、常時賃貸広告を掲載し、賃借人を募集している状態を維持する必要があります。(1)や(3)で届け出ている場合は、賃貸物件として併用することができません。

2.賃貸広告の掲載:
常に賃貸広告を掲載し、賃借人を募集している状態を維持することが求められます。これにより、住宅宿泊事業とマンスリーマンションの併用が可能となります。

3.賃貸借契約:
マンスリーマンションとして貸し出す場合は、賃貸借契約を交わす必要があります。これにより、法的なトラブルを避けることができます。

これらの要件を満たさない場合、旅館業法違反となる可能性があるため、注意が必要です。

【ウィークリーマンションと旅館業許可】

厚生労働省の通達によれば、短期宿泊賃貸マンション(通称ウィークリーマンション)で収益を得るために第三者から宿泊料を徴収して利用させる場合は、旅館業の許可が必要となりますのでご注意ください。

〇都市計画法のおける営業が可能な地域

簡易宿所の営業が可能な地域

都市部で旅館業の許可を申請する際には、都市計画法の制約に注意が必要です。
この法律について簡潔にまとめました。

都市計画法とは、無秩序な開発を防ぎ、居住しやすく商工業の発展しやすい都市を構築することを目的とした法律です。この法律は、都市の健全な発展と秩序ある整備を目指し、土地利用や都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画を定めています。主なポイントは以下の通りです。

1.都市計画区域の指定:
都道府県は、都市計画区域を指定し、その区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分します。市街化区域では開発が認められ、市街化調整区域では開発が制限されます

2.用途地域の設定:
市街化区域内では、住居専用地域、商業地域、工業地域などの用途地域が設定され、各地域の建物の種類や用途が制限されます。

3.都市施設の整備:
道路、公園、上下水道などの都市施設の整備を計画し、住民の生活環境を向上させます。

4.開発許可制度:
一定規模以上の開発行為には、都道府県知事の許可が必要です。

このように、都市計画法は、計画的な都市づくりを推進し、住みやすい環境を整えるための重要な法律です。

市街化区域と市街化調整区域

市街化区域と市街化調整区域を簡単に教えてください

市街化区域とは、 すでに市街地として整備されているか、今後10年以内に優先的に市街地として整備されるべき区域です。この区域では、住宅や商業施設、工業施設などの建設が積極的に行われます。一方、市街化調整区域は、市街地の無秩序な拡大を防ぐための区域で、新しい建物の建設が基本的に制限され、農地や緑地の保全が優先されます。簡単に言えば、市街化区域は「開発が進む地域」、市街化調整区域は「開発を制限する地域」と覚えると良いでしょう。

市街化調整区域では、原則として新たに旅館業の営業はできません。ただし、観光資源の有効利用が認められる場合など、特定の条件を満たせば許可が下りることもあります。
用途地域
【旅館業の営業が可能な用途地域】

  1. 第一種住居地域
  2. 第二種住居地域
  3. 準住居地域
  4. 近隣商業地域
  5. 商業地域
  6. 準工業地域

これ以外の用途地域では、基本的に旅館業の営業はできません。

用途地域制度は都市計画法に基づいて市街地を13種類に分類し、それぞれの地域で建てられる建物の用途を制限する制度です。この制度より、無秩序な開発を防ぎ、住環境を守ります。また、特定条件を満たせば市街化調整区域でも旅館業の営業が許可される場合があります。

住宅宿泊事業(民泊)の営業が可能な地域

【住宅宿泊事業(民泊)の営業が可能な用途地域】

  1. 第一種住居地域
  2. 第二種住居地域
  3. 準住居地域
  4. 近隣商業地域
  5. 商業地域
  6. 準工業地域
  7. 工業地域

住宅宿泊事業は住居が建てられる地域であれば営業可能ですが、工業専用地域では不可です。また、市街化調整区域では自治体による制限が多いので、事前に確認が必要です。

用途地域と市街化調整区域の調べ方

旅館業や住宅宿泊事業の営業ができる地域とできない地域があるのは分かったけど、実際にどうやって調べればいいの?

実際に旅館業や住宅宿泊事業の営業ができる地域を調べる方法はいくつかありますが、国土交通省が提供する「不動産ライブラリ」というサイトが便利です。こちらは、全国の都市計画情報、防火地域の情報、防災情報などを確認することができますので、このサイトを利用して、ある程度営業が可能な地域か否かを確認することができます。

https://www.reinfolib.mlit.go.jp/map/

〇宿泊施設の管理

管理者との契約

旅館業の場合

法令上、管理者との契約は義務ではありませんが、自分で予約管理やチェックイン・アウト対応が難しい場合は委託が必要です。例えば、「鍵の受け渡し」「清掃」「リネン」などが自力で行えない場合、専門業者に委託することになります。また、無人施設の場合、フロントを置かないため、法令を順守しなければなりません。

次の二つに該当する場合は、フロントの設置が免除されます。
(1) 玄関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。

(2) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊客の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆けつけることができる体制をとることが望ましいこと。

(1)フロントでの対面応対をビデオカメラやタッチパネルに置き換える場合、必ずチェックイン時に宿泊者の顔を確認してからドアを開ける手段を伝える必要があります。また、客室へ出入りも、常時カメラで監視する体制を整えなければなりません。

(2)10分以内に駆け付け可能なエリアに緊急対応者を配置する必要があります。ただし、自動車ではなく徒歩10分圏内とする自治体もあるので注意が必要です。また、10分以内の距離に事務所の設置を許可の要件とする自治体もあります。

住宅宿泊事業の場合

家主不在型の場合、住宅宿泊管理業者への委託契約が必要ですが、自社で住宅宿泊管理業の資格を持っている場合は不要です。なお、管理業者は、30分以内に物件に駆け付けられる距離に事務所を置くことが求められます(再委託も可)。

住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業法に基づき、住宅宿泊事業者から委託を受けて、宿泊施設の管理業務を行う事業者です。これには、宿泊者の衛生や安全の確保、周辺地域への配慮、苦情対応などが含まれます。
特に、住宅宿泊管理業者は、苦情や緊急事態に迅速に対応する義務があります。具体的には、苦情が発生した場合には、30分以内に現地に駆けつけることが求められています。
行政書士・FPみらい法務事務所 YouTube公式チャンネル 行政書士・FPみらい法務事務所 LINE公式アカウント ドローン許可申請サポート
タイトルとURLをコピーしました